小説「花の大江戸フォーク村ぴのきおらんど物語」その7

これは物語であり、登場人物の名前やお店の名前は
実在の名前とは全く関係がありません。

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栃木刑務所の刑務作業は主に4つに分かれる。洋裁・金属加工・職業訓練・その他の4つに分かれる。洋裁は体操服・体操帽子・刺し子刺しゅう小物等。金属加工はベアリング組立・電気器具等。
職業訓練は美容科,フォークリフト運転科,ホームヘルパー科。ビル設備管理科,総合美容技術科等。その他はボールペン組立・弁当箱加工・マスコット製作等。

まっちゃんとみゆきはこの3年、洋裁刑務で体操服作りに従事していた。

刑務作業は受刑者の社会復帰を目的に課される重要な作業である。

女子刑務所は我々が想像するより、環境は良く大部屋の団体部屋ではあるが各部屋には、テレビが設置されており、運動会等の団体行事もあり、受刑者は比較的のびのびと自由を見出し生活を送っていることはあまり知られていない。

まっちゃんはミシンの糸を替えながら隣で作業をしているみゆきにささやいた。

「みゆきちゃん、今夜0時決行よ」

「まっちゃん、考えなおして。絶対無理よ。我慢すればあさってには無事出所できるのよ・・・」

「何を今更、たわけたことを!」

「江戸っ子か!」

「いい?刑期終えてそのまま出所だとハクがつかないのよ!シャバにこのまま出ても、誰が拾ってくれるっていうの?」

「馬場?」

「馬場・・・もう笑わないわよ。。もしかして出所の時、よっくんが迎えにくるとでも?」

「必ずきてくれるわよ。主人だから」

「けっ!笑わせるんじゃないよ。ここ3ケ月面会にも来てないじゃない!女でも出来たんじゃないの?」

「ちょっと、まっちゃん言い過ぎよ。」

まっちゃんは、窓の向こうの雲一つ無い青い空を見た。

「いい?みゆきちゃん、今宵あたしたちは、キャッツアイになるのよ」


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昨夜の大江戸フォーク村「ぴのきおらんど」。いや~んの涙は止まることがなかった。

「いや~んさ、もう泣くなよ・・・」

「てやんでぃ!」

「・・・・・・・・・・・」

「どうちゃん、ここで江戸っ子か!って突っ込んでくれよ」

「で、なんでまっちゃんを助けに行くのかって聞いてんだよ」

いや~んは重い口を開き、語り始めた。

「オレとまっちゃんは10年前傭兵だったんだ。シリアの内地へ送られ人質救出作戦のメンバーとして戦地のど真ん中にいたんだ」

「江戸っ子か!」

「江戸っ子じゃねえよ、ここはランボーか!って言ってくれよ」

「続けろよ。でもなんかこう現実離れしたウソくせえ話だな」

「作戦を遂行し、人質を救出し脱出するときだった。待ち伏せされてたんだよ。敵の奴らにそしてめまぐるしい銃撃戦が始まったんだ。味方が銃弾に倒れていく中、敵の銃口がついにオレに向けられたんだ。その時まっちゃんは躊躇のかけらも見せないで、オレの前に飛び込んできた。2発の銃弾を胸に浴びその場で倒れた。。。おれをかばってまっちゃんは。。。。

幸いそのとき、味方のへりが到着して、間一髪で命拾いしてまっちゃんもまた胸に2発の銃弾を浴び、虫の息寸前だったが、病院で緊急手術。。なんとか命は助かった。

けど両方の乳房を失ったんだ・・・オレを守るために。。。まっちゃんは乳房を。。」

「そうか・・・それでまっちゃんは、胸がないのかぁ・・・」

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「そうか、いや~んはその時の恩を今、返そうと言うんだな?」

「ちがう、まっちゃんから手紙がきて<あの時の恩を今返せ>って書いてあった」

「はぁぁあ?」