小説「花の大江戸フォーク村ぴのきおらんど物語」その8

これは物語であり、登場人物の名前やお店の名前は
実在の名前とは全く関係がありません。

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大田区の閑静な住宅街。新緑の季節に木々の葉が雨上がりの朝をむかえる中、
主婦のみぃさんは、家族を送り出し、台所の洗い物を済ませると愛犬の
「ガリー」を連れ、玄関からいつもの散歩コースへ。愛犬のガリーは凶暴な
大型土佐犬。近隣の住民たちから恐れられる存在であるが主人のみぃさんには
忠実で、命令にそむくことはまずない。またみぃさんがガリーを連れて散歩する
時間帯に、犬を散歩して歩く近隣の住民もまたいない。その時間帯はまわりから
避けられていたのだった。

「ガリー、雨も上がったわね。今夜はきっと星空よ」

みぃさんは散歩終えると、自宅の一番奥の部屋の屋根裏部屋のはしごを
おろし、ゆっくりと上った。そして1.5メートルほどのジュラルミンケースを
運び出した。

「何年ぶりかな・・このケースを開けるのは」

ケースの中には大型ライフル。

KSVKアンチマテリアルライフルの有効射程距離は、1,500メートル。
1997年ロシアで開発された大型対物ライフルで装弾数は5発。
全長1.4メートル。重量12㎏。 スコープなどの光学照準器を装備し、昼夜問わず射撃を
行える大型ライフルである。

勘の鋭くない読者でももうおわかりだろう。

総理が手配した凄腕スナイパーとは、この閑静な住宅街に住む主婦のみぃさんであった。

「ベトナムを思い出すわ・・・」

何を言ってるんだろう。ベトナム戦争始まったのは1960年だ。
まだみぃさんは産まれてないじゃないか?
いつもの妄想である。ライフルと包丁を手にしたときはいつも妄想が生まれる。

包丁を手にしたときは、いつもマグロ解体ショーの主役を妄想してしまう。

午後から府中刑務所の周辺を下見に行く予定だ。射撃位置を決めるための下見である。

でも不思議だわ? ほんとに府中刑務所かしら。
あの刑務所には女子は収容されてないはずなんだけど。。。