Kウィルス

今月中旬、大森ココロでKウィルスが発生した。Kウィルスとは化粧ウィルスの事だ。私はこの場にいなかったが、誰かが中島みゆきの化粧をステージで、歌った。

そしたら後に続く連中も、自分の意思とは関係なく次々に、あろうことか化粧を歌い始めた。結果、5人が化粧を歌ってしまった。化粧ウィルスが感染したとしか考えられない。その場に居合わせた男が涙目で語った。そんなバカな。同じ曲を5人が無意識に歌ってしまうなんて、そんなバカな事があるものか。

そして私はリアルにそのKウィルス感染の場に遭遇するだけか、見事に感染した。

土曜日のライブが、終わって通常営業に戻ってからの事だ。まっちゃんはステージで乙女ライブの課題曲の化粧を歌った。

私の頭の中からあのKウィルスの事は消え去っていた。

まっちゃんが歌い終わりしばらくすると、えびちゃんが、「おれ、化粧唄う」とうなされるように言った。そのまなざしはどこか遠くを見ている。目が完全にイッていた。「ちょっと、ちょっと、いま、まっちゃんが化粧を歌ったばっかりじゃん」「いや、化粧を歌わなければいけない。」

そしてえびちゃんはステージで化粧を歌った。この時、もしかしたらこれがKウィルスか?と背筋が一瞬冷たくなった。股間も冷たくなった。もしかしたらこれが失禁か?

そしてステージは私の番。唇をかみしめてを歌おうと決めてステージに上がり、譜面をめくる。なぜか化粧の譜面のページで、ページをめくる指が止まる。そして頭の中で老婆が、「化粧をうたえ」と命令してくる。強い口調で命令してくる。殺意を感じるほどの強い口調で命令してくる。

これがKウィルスの正体か。逆らうことなど出来ない威圧感を感じる。ここで逆らえば間違いなく殺される。

えびちゃんもこの恐怖と戦い、そして敗れた。客席のえびちゃんはさっきの恐怖で髪の毛は抜け落ち、廃人のような表情でこちらを見ている。

仕方ない。化粧を唄った。

さらに後に続くのんちゃんも化粧を。

結局この夜、何人がKウィルスに感染したのだろうか?

恐ろしい体験をした。

そしてぎんちゃんも、こげちゃんも化粧を唄う。完全にKウィルスが感染したのだ。