鬼21
「太郎や、この回覧板を重兵衛の家へ届けてくれんかの?」
おとうは体をおこしたまま、回覧板を太郎に差し出した。
そして続けた。
「重兵衛ものう、もうちょっとしっかりせんと。嫁はいるのにたまにこの島にくるへんちくりんな女に熱をあげておるんじゃよ。おまえが竜宮城でウハウハやっている頃からの事じゃがのう」
回覧板を受け取ると、太郎は玄関の戸を開けて外へ出た。
井戸にもたれてタバコ吸っている桃太郎を見て言った。
「桃太郎さんよ、キジ鍋うまかったぞぉ!ごちそうさん」
「太郎!貴様、必ずバチが当たるぞ!でかいバチがあたる」
「ばかか!おまえ、おれの姿を見ろ、一瞬にして玉手箱あけて50才も年を取ったんだよ。これ以上のバチなんか当たるもんか!」
「さっき、鬼の話が聞こえたぞ。かなりびっくりしてたみただけど何かわかったのか?」
「ああ、すべてわかった。おとうが教えてくれた。いくつも罪をおかしてたんじゃよ。そして最後の罪がこの島を追い出されるトリガーになったんだ」
「鳥が? 貴様!キジを食っておいてまだ食い足りぬか?」
「おまえと漫才やっている時間はない。ちょっと重兵衛の家に回覧板届けてくるから。じゃあな」
「ああ。。。。」