リニューアル「オイラとギター」その2

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第2章 石野真子

狼なんか怖くない
大ファンの石野真子のデビュー曲だ。
石野真子はかわいい。
どきどきしながらファンレターも書いた。
明星から、石野真子のページを切り取ってアルバムに貼った。
2週間くらいしてファンレターの返事が届いた。
学校から帰ってきてポストをのぞいたときの興奮を忘れない。
バタバタして、その封筒を自分の部屋に持ち帰った。
あまりにドキドキして封を切れない。

すげえよ。返事がきたよ。。。オレに。
まず友達に電話して自慢したほうがいいかなぁ?
いやいや、明日学校に持って行ってみんなに見せびらかした方が。
でも、よくオレに返事をくれたよなあ。。。

はさみで封筒を切った。
後はご想像の通り。


明星の付録の歌の本を開いた。
石野真子の「狼なんか怖くない

こ、これだ!この曲なら弾けるかもしれない。
コードも簡単そうだ。

Am Em C  G D7 ...

友達から「最初に一つ一つコードを覚えていくよりも
何か曲を選んでその曲を練習したほうが上達の早道だぞ」と言われた

確かにな。。。いいこというじゃないかね。

ただひとつ言っておくぞ。

石野真子の曲を練習して、いったい誰に自慢するんだ?」

うるせえんだよ!

「ギターの初心者の最初の壁になるのが、Fのコードだよ」友達は言った。

「それそれ、Fのコードだけどさ、真子ちゃんの曲にも出てくるんだけどさ
 歌の本のギターのFコードの黒●の数 多くない? 指が足りないよねえ
 指は5本しかないけど黒●の印は6個あるぞ」

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「ちゃんと歌の本の最後のページを見ろよ。押さえ方を書いてあるじゃないか!」

「なんだよ。偉そうに!」

「あのな、この1フレット目を人差し指で全部押さえるんだよ。ほらこうやって」

友達はやってくれた。

無理!
無理!
絶対無理!

友達は続けた。
「おれもさ、まだ完璧にすべての弦の音が出せるわけではないから
 あまり偉そうに言えないけどさ」

「偉そうに言ってるじゃん」

「とりあえず、このFを覚えないと先に進めないぞ」

「まじかよ。。。」

「だいたいの人がこのFでギターを挫折するらしいぞ」

まず、人差し指で弦6本押さえる。結構、力が入る。 そして中指で
2フレットの3弦を。。。次に薬指で


つったぁ!
つったぁ!
指がつったぁ!


無理だよ
おれは、指も短いし。

漫画ドカベンの殿間がピアノを弾くため指と指の間に切れ込みを入れた
涙ぐましい努力を思い出したが、おれにはできない。

とりあえず 何度も何度もFを練習してなんとか押さえられるようには
なった。しかし、まるで音がでない。
どの弦の音がでないかって? 全部だよ。全部の弦の音が出ないんだよ。

あぁぁ。。。せつないなぁ。。。

とりあえず

Am Em C  G D7 とかはなんとか、なんとか弾けるようになった。

とりあえず最初からやってみよう

♪あなたも狼に変わりますか。。。。♪

つぎの瞬間あろうことか、ギターの穴に手作りの三角ピックが落ちた。

なんてことだ。

ギターを逆さまにして左右に振った。カラカラといろんな音が聞こえてきた。

な、なんだ?いろんなものが入ってるぞ。

次の瞬間、ちっちゃい消しゴムが落ちてきた。押しピンも落ちてきた。

ゴミも落ちてきた。ピックがなかなか落ちてこない。

それでも振っていたら全く音がしなくなった。

あれ?あれ?あれ?下に落ちたか?

足下を見る。ない?落ちてきてない?

消えた。おれの三角ピックが消えた。これ以上下敷きをはさみできったらおふくろから
殺される。

それでも振っていたらまた音がしてきた。
なんだぁ。。。どこかにひっかかってたらしい。

そして最後にピックが落ちてきた。足下はゴミだらけだ。

それから毎日のようにFの特訓を続けた