リニューアル「オイラとギター」その3
第3章 アリス最高!
毎日毎日、ギターの練習。
学校から帰ってきては、すぐ2Fの自分の部屋に行く。
ギターは相変わらず、持ってないから日替わりであらゆるところから借りて。
そろそろほしくなってきたな。自分のギター。
左手の指先が堅くなってきた。
弦を押さえても前みたいに痛みを感じなくなった。
さらにFコードもなんとか、ごまかせるくらいの音が出せるようになった。
とは言えストロークだとごまかせるが、アルペジオのFは相変わらず危険だ。
あちこちの弦が鳴らない。もうちょいだな。
でもある程度弾けるようになると、友達に自慢したくなる。
努力の結晶だ。ふふふ。。。自慢してもバチはあたるまい。
友達の前で弾いた。弾き語りだ。
「♪あなたもオオカミにかわりますかぁ~・・・・・」
「ねえ、なんで石野真子なの?」
「だってオレ、石野真子がすきなんだもん。黙って最後まで聴けよ」
「ちがう!ちがう!きっとおまえだけだぜ!石野真子の曲をやってるのは」
「石野真子の曲をやるのは、そんなに悪いことかね?」
「みんなさ、千春とかNSPとか拓郎とか小椋桂とかかぐや姫とか練習してるぜ。」
「狩人のあずさ2号もちょっと弾けるぞ」
「石野真子を弾けても自慢にはならんだろ?」
「誰も自慢しとらんわ!ボケ!」
「さっき思い切り自慢してたじゃねえか」
「だってさ~ ほかの歌手のレコードも持ってないし曲もよくわからん。。。。」
「ラジオのFMで毎日夕方6時から番組やって結構フォークが流れるからそれをとりあえず
録音して曲を覚えなよ」
我が家にはラジカセがない。
ラジオとカセットテープレコーダーが別々にある。
ラジオの音を録音できる画期的な機材はない。
互いに向かい合わせて録音しなければならない。今、考えると実に不便だがそれしか方法はなかった。
ザベストテンもTVの前に、テープレコーダーを置いて録音した。
黒柳徹子と久米宏の声が曲のイントロにいつもかぶる。 実に迷惑だ。さらに
おふくろの声とかおやじの声とかもしっかり録音されていた。
雑音だらけじゃねえか。このテープはよ。
しかもこのテープレコーダは英会話教材セットで買ったもらったテープレコーダ。
教材用のカセットテープはあるが、普通の録音用のテープはない。
買ってもらえなかった。
それで親にだまってこっそり、教材用のカセットテープの爪のところにセロハンテープを貼り録音できるようにした。
そして親に黙って、教材用のテープを1本ずつつぶしていった。
未だに親には言えない。
いつごろだったかは記憶にないが、ラジオのFMからアリスのライブが流れてきた。
それがアリスとの出会いだった。
MCでチンペーとかベーヤンとかキンチャンとかどうも名前がよくわからん。
なんとなく3人組というのはわかった。
しかしこのチンペーとか言う人のしゃべりはめっちゃおもしろい。
ラジオの前で夢中になった。ゲラゲラ笑った。
そして曲が始まった。
冬の稲妻
かっこいい。
かっこいい。
かっこいいぞぉぉぉおおおお!
これだ。この曲だ!これを覚えよう。
平凡の付録の歌の本をめくる。
あった。あった。あったぞ。
なんと得意のAmからだ。
絶対誰よりも、オレの方がAmは得意に違いないぞ!
わけわからん事を考え出すとよだれが出るのも私の癖だ。
なんてコードの少ない曲だ。
ありがたい!
たたみの上であぐらをかき、右足で歌の本の冬の稲妻のページが
めくれないようにおさえる。
「♪あなたは稲妻のように~」
よしいける!
よしいける!
いけるじゃありませんかぁ!
確かな手応えを感じた。
そして次の瞬間、 歌の本を押さえていた右足の小指が思い切り、つってしまい
雄叫びをあげた。