リニューアル「オイラとギター」その4

f:id:pinokio19621004:20140521102410j:plain
第4章 ながぶち?

とうとう自分のギターがほしくなった。

友達のギターを毎回借りるのも限界がある。

そしてある日親父にねだった。

「ねえ。バイクの免許とりたいんだけど。免許とったら
 バイクを買ってほしんだけど」

「だめだ。あぶない」

高校1年生の時、まわりはほとんど原付の免許を取り始めていた。
そしてスーパーカブを買い、遠方まで遊びに行く。
それがたまらなくうらやましかったが。
それよりギターのほうが、ほしかった。
でも最初からギター買ってくれと言ったら断られる。
2段階で交渉せねば。

「絶対だめかな?」

「だめだ!」

「じゃあさ、バイクはあきらめるからその代わりにギターを
 買ってくれよ」

「・・・・・」

「ギターはバイクに比べて安いし、安全だし。。。。」

「ほんとはどっちがほしいんだ?」

その翌月ヤマハの25000円のギターを買ってもらった。

やっとやっと自分のギターを手にいれた。
ぴっかぴっかの新品だ。大切にしなくちゃ。
すんげえうれしかった。
オレのギターだ。
オレのギターだ。


誰にも貸さんぞ。絶対貸すものか!
人に借りた恩などとっくに忘れてた。

それから日々特訓。

「♪あなたは、稲妻のように~」

なんて音もいいんだ!

------------------


しばらくしたある日の夕方ギターの練習をしながら
FMラジオからミニライブが流れてきた
ギターの弾き語りだ。誰だ?初めて聞く声だ。

  「おまえのひざまくらが~」

第一印象は、<なんかへんな歌だなあ・・・>だった。

でもそれ以上にギターの上手さにすっかり驚愕した。
な、なんじゃあ?このテクニックは!
どうやって弾いてんだ?どうなってんじゃ?

こいつ 誰よ?


こいつ、むちゃくちゃうまいじゃないか!


まだアリスに夢中だった。
「あなたは稲妻のように~・・・」
毎日学校から帰るとジャンジャカ・ジャンジャカとバカの
一つ覚えみたいに繰り返し繰り返し弾きまくっていた。
AmとFとGの3つしかない曲をマスターして
気分はすっかりアリス。もう誰でもこいって感じ!


ミニライブにすっかり聞き入ってしまった。
つぎに12弦ギターで(当時12弦ギターの存在は知らなかったが)

「やさしい口調で語りかける~」

わっ!
わっ!
わっ!
わっ!

うそ?うそ?
こいつ、すげえ!!
すげえギターうまい。

何者だ?こいつ。
早いアルペジオ(スリーフィンガーという言葉さえ知らなかった)は
どうやって弾いてんだ?

素朴な疑問もあったが、ただただ感動は脳天をぶち抜く勢いだった。

翌日学校へ行った。
教室の片隅でちょっとかわいくない女の子たちが
「ねえ聞いた?聞いた?剛のライブ」
と喜んで話している。
「剛、最高だよねえ!」
「うん!うん!」
「LP買う?」
「もう持ってるよ」
「テープもってくるから録音して」
ちょっとかわいくない女の子たちは実に金持ちだ。

ん、つよし?
つよしって言うのか? 名字が「つよし」か?そんな事はねえか。
名字はなんと言うんだ?

ちょっとかわいくない女の子たちの話でも
貴重な情報源である。


知らないのはオイラだけであった。昨日のミニライブで聞いたのは
2枚目のアルバムを出して鹿児島出身の人気急上昇中の「長渕剛」だった。
私は知らなかったのだ。長渕剛を。

まだ顔も知らない。