リニューアル「オイラとギター」その8

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2学期になり、体育は水泳。
男子はせまい更衣室で、ひしめき合って水着に着替える。


非常に危険な時間帯だ。

年頃である。もちろんみんな腰にバスタオルを巻いて水着に着替える。
みんなバスタオルの巻き方は慎重だ。

おれの場合は、さらに頑丈に巻く。こんなところでばれるわけにはいかないのだ。


授業中の飛び込みは禁止だが、ごく一部の奴らがわざと水着のひもをゆるくして
飛び込んで、飛び込んだ瞬間に半ケツがポロリ。これが女子にウケる。

それを見てた女子がゲラゲラ笑うのだ。

もちろんオレはそんな行動は絶対死んでもやらない。やってはいけないのだ。
こんな場所で、尻毛がばれてしまっては絶対いけないのだ。

何事もなく水泳の授業が終わり、また更衣室でひしめきあいながら着替える。

また危険な時間帯だ。バスタオルを頑丈に腰にまく。

近くで着替えてた一人が言う。。。

「なんか最近さ、スネ毛がいっぱい生えてきてさ~ 自分でも気持ちわるいよ。」

ふん!スネ毛くらいでなんだ!
オレは尻毛だぞ!
尻毛が生えてみろ!
気持ち悪いどころか、へたすると発狂するぞ!


そいつの足のまわりにみんな集まった。

「ほんとだ。おまえのスネ毛さ、異常だよ。いつからこんなに生えてきたんだよ。突然変異?」

オヤッ?どっかで聞いた質問だ。声の主にも聞き覚えがあるぞ。あいつだ。

唯一、おれの尻毛の秘密を知っているあいつだ。

あいつがこっちを見てニヤニヤしながら、あの日と同じセリフを言っている。

そして、オレの名を呼んで

「こいつのスネ毛おかしいと思わない?なんでこんなに生えるのかなぁ?」

コロす!

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尻毛・・・・
なんともきたならしい言葉だ。
不潔感さえ覚える。
本人が、そう思っているのだから人様もきっとそう思っていることだろう。

しかし、なんで尻に毛が生えてきたんだろう。
過去に記憶をさかのぼらせると、
1点だけ思い当たる点があるのだ。

それは中学校の時だ。ある雨の夜だった。
机にむかって宿題をしていると
背中が無性にかゆくなって、肩から背中に手を伸ばしたところ
肩から背中にむかうところに、1本の毛が生えている事に
気がついた。

あれ?なんでこんなところに毛がはえているんだろう。
それも1本だけ。気持ち悪いな。。。。
抜いてやれ
そしてその1本の毛を引きちぎった。

それから10日後、いっぺんに尻に毛が数千本生えてきた。
驚いたのは、当の本人だ。

なんじゃぁ?こりゃぁ!

絶対何かの呪いだと思った。
あの背中の毛を引き抜かなければ、こんなことにならなかったはずだ。

なんとかしなければ「十五夜」の夜がやってくる。
おれの村では、村の行事で毎年、十五夜の夜に中学生以上の男子は、あろうことか「ふんどし」姿で
公民館の広場で行われる綱引き大会に出場しなければならない。村の習わしにしたがって。
ふんどしですぞ。ふんどし! 尻が全快なのですぞ。
尻が全快になったら一発で尻毛がみなさまにばれてしまうではないか!


かなりやばい。

尻に毛が生えていることは、何があっても隠さなくてはならない。

よし!剃ろう!これしか方法はない。

風呂場でシャンプーを両手にたらし、尻にこすりつけた。
しっかりと尻が泡立つ。毛にシャンプーがよくなじんでいる。

仁王立ちになり、親父のT字カミソリを右手にとり上半身をねじる。そして
そりはじめた。

なんだか気持ちいい。

しかしこのねじった体勢でそるのもきつい。

片方の尻を念入りに剃る。そしてお湯できれいに流した。
鏡に映してみた。

すごくきれいだ。きれいな尻だ。これがふつうの尻なんだ。

そして剃ってないもう片方の尻毛にの片尻をみた。

おぞましい。。。これじゃ獣だ。

そしてシャンプーをつけさっきの要領で剃り上げる。

完璧だ。写真にとりたいくらだ。
手で触ってみた。

つるんつるんではないか。見て良し!さわって良し!

こんなところに毛が生えてたなんてきっと嘘だったんだ。
おれは悪夢をみていたに違いない。
きっとそうさ。

十五夜もなんなくこなし、それから半年後。。。。

尻毛は以前よりも豊作状態になり、それだけじゃない。

今度は腹にたくさんの毛が生えてきたのだ。

どうなっとるんじゃ!おれの体は!