リニューアル「オイラとギター」その10

f:id:pinokio19621004:20140226105122j:plain
高校生活も終盤、自分でもいうのもなんだが
だいぶ弾けるようになっていた。
つもりだ。つもりかな。どうだろう?
比較対象がないからわからない。

アルペジオ覚えた。
スリーフィンガー覚えた。

でもこんくらいだ。ストロークもジャカジャカ弾くだけで
いろんなリズムは刻めない。
まだコードも簡単なコードだけで難しいコードは
覚えようとしなかった。(これは後々、致命的な事に)


でも苦労したのはやっぱりFコードである。

Fには2つの押さえ方がある。

人差し指で1弦から6弦まで押さえる押さえ方

f:id:pinokio19621004:20130222083014j:plain
画像は「http://www.j-guitar.com/ha/hajime/aco.html」から引用

この押さえ方はほぼ大丈夫なんだけど。

f:id:pinokio19621004:20130222083015j:plain

Fと親指で6弦人差し指で1弦と2弦を押さえるFである。

画像は「http://www.j-guitar.com/ha/hajime/aco.html」から引用

長渕を弾くにはなにがなんでも後者のFもマスターしなければならない。
最初のFの押さえ方では出せない音がある。

なぜかといえばこの押さえ方で
2弦3弦のハマリングオン(開放弦の音必要)および
プリングオフ(開放弦の音必要)
をフィンガリングで盛りこめられている曲が多いからだ。
長渕剛の「順子」のエンディングもこの押さえ方で
やらないとだめだ。

ギターをやりはじめの頃から前者のFで練習していたため
後者のFへの切り替えが結構大変だった。


手の小さい、短い指の私には結構不利だった
今でもきれいに弾けない。

Fだけが苦手というわけではなかった。
ちなみにBmのコードもこのような押さえ方をするが
とんでもない!。無理!無理!絶対無理!
Bmでは親指で6弦と5弦を押さえなければいけない。


高校を卒業して、福岡の大学へ進学した。
一人暮らしは、まだ早いと親父とお袋に言われて下宿生活を
することになった。

鹿児島から福岡までの電車の中、がらがら。

車両の中には数人。ギターを取り出してぽろぽろ弾いた。


大学まで約1.5kmの住宅街の中にその下宿はある。


木造の2階建てで見た目、震度2の地震がきたら一発で倒壊の危険がありそうな
おんぼろである。いったい何百年前に建てられたものだろうか?

うへえ~ こんなとこに住むのかぁ~ やだなぁ~
かなりショックだった。


下宿の玄関は、下宿生のいろんな靴が散乱しており、とりちらかっていた。

大家さんに2Fに連れていかれ、ある薄暗い部屋に通された。
ベニヤの扉をあけると狭い4畳半。この部屋に住むことになる。
風通しの悪く、一日中、陽もささない部屋である。

かなりへこんだ。

下宿なのでとうぜん風呂も共同 洗面所もWCも共同。
先輩後輩の服従関係は絶対。後輩のものは先輩のもの
先輩のものは、先輩のもの。
後輩の体は、先輩のもの。

WCでウンコをしていても先輩から早く出ろと言われれば
途中でウンコを切って、すぐに先輩にWCを譲らなければならない。
風呂も先輩から順番。
最後のほうは、もう湯船が汚い! 汚い!
どうみても風呂の中に浸かって体を洗っていたんじゃないかと
思えるくらいの汚さだ。

いかんぞ。いかんぞ。この暮らしに慣れなければやっていけない。

買ったばかりの歯磨き粉も買ったばかりの洗濯機の横に置いていた洗剤も
あっというまになくなった。

ふひゃひゃひゃ・・・がまん! がまん!

先輩は4人住んでいた。大学4年が1名 3年が1名 2年が2名
そして新入生は、オイラのほかにもう一人。
6人がこの下宿で暮らしている。

入学式も終わり、親元を離れ本格的に下宿生活が始まった。

実家にいたときみたいに、ギターをひくとき親から

いい加減勉強をしなさいと叱られることもない。

自由なのだ。

いつでも好きなときにギターを弾ける!

そうなのだ!オイラはとうとう自由を手に入れたのだ。

そうだ。この喜びを歌にしよう。「自由」という歌を作ろう。

ソフトケースからギターを取り出した。ソフトケースはどうもいかん。

取り出すたびに糸巻きにカバーがふれてチューニングが狂う。こいつは不便だな。。

やっぱりハードケースがいいのかな。ハードケースも値段が高いよな~。。

25000円のヤマハのギター

10万円以上の高いギターは、外見もやはり高そうに見える。フレットに埋め込まれたメキシコ貝だっけかな?

キラキラ光って実にギターが高価そうに見える。

それに憧れた。鹿児島にいるとき楽器屋でフレットに貼るメキシコ貝のような

シールを買って、それを今貼り付けている。

ふふふ。。こうやってみるとオイラのギターも実に高価に見えてくるものだ。ちょっとした自慢!

しかし1ケ月もしないうちに、そのシールははがれてきてものすご~く貧乏くさく見える!

い、いかん!はがそう!

このままじゃ25000円以下のギターに見えてしまう


またこの下宿からも楽器屋は、比較的近い。歩いていける距離だ。

鹿児島の田舎にいた時は、楽器屋へは異常な距離だったからな。


音叉を探した。

あれ? あれ? 鹿児島から送ったダンボール箱の中に音叉がない?

何度も探したが、音叉がない。どこにもない。

もしかして鹿児島に忘れたか!とんだ失態だ!

下宿には電話がない。電話をかけるときは近所の電話ボックスまでいかなければ

ならない。これはさすがに不便だ。自由と引き替えに手に入れた代償はでかい。

先輩にどこに電話ボックスがあるかを聞いた。

先輩は親切だった。紙を取り出して地図をこまめに書いてくれた。

すごくすごく・・こまめに。。。

すごくすごく・・・詳しく。。。。

すごくすごく。。。おいおいふつうの地図よりも詳しく書くんじゃない!

そんな。。。いいよ。。。交差点の名前なんか。。。。

文字が多すぎて道がつぶれて見えなくなってるじゃないか!

それでも先輩は説明を続ける。。。。

「あのね、ここにも電話ボックスがあるけど (8)のボタンが壊れていて(8)を押しても
 反応しないんだよね。。(8)を使う? 」

「ええ。。(8)は使いますよ」

「じゃあ、ここの電話ボックスは×だな!そうすると。。。。 」

そのとき先輩の部屋に、別な先輩が入ってきた。

「何、してるの?」

「電話ボックスの場所を教えてるんよ」

「ふ~ん」

「あそこの電話ボックスってさ、確か(8)のボタンが使えなかったよな?」

「え?(8)じゃなくて(2)だろ?」

「(2)だっけ?うそぉ~?(8)じゃなかったけ」

「いや(2)のボタンが壊れている。これは確かだよ。最近ウチの部の後輩があそこの
 電話ボックスを使って、ぼやいてたから間違いない!」

「いやいや、(8)だよ。(2)じゃないよ。絶対(8)だよ」

「いやいや(2)だって!絶対(2)だよ。賭ける?」

「おし! 賭けよう!」

「じゃあ、後輩に電話して聞いてくるぜ!500円賭けな!」

「わかった!絶対払えよ!」

と、この先輩は下宿を出て後輩に電話をかけに行った。

「まったく、あいつは仕送り日が近くなると何でも賭けに結びつけるヤツなんだよ」

「あの、さっきの先輩は電話をかけに行ったんですよね?」

「そうそう。。。」

「どこに電話をかけにいったんですか?」

「バス停近くのタバコ屋の公衆電話だぜ!きっと」

「え~!そんな近くに電話あったんですか?」

「そりゃあ~公衆電話はあちこちあるさ!でも君が聞いてきたのは電話ボックスだよね」

このばかたれ!

100円玉を10円玉にくずして公衆電話から電話をした。
おふくろが出た。

「もしもし。。おれ、音叉を忘れた」

「オンサ?」

「そうそう。音叉」

「何?オンサって?」

「ほらほら、あのギターをおれが弾いていたとき、たたいてキーンと
 鳴らすアレよ」

「キーン?」

「あの先が二つに分かれていて鉄でできているやつよ」

「鉄?」

おんどれは、まったく探す気がないな!

「金づちの事?」

おい!ひとことも金づちってオレはは言ってないぞ。

電話が切れた。100円あっという間だった。

たとえ1000円使ってもお袋には、理解してもらえそうにない。

よし、買おう。


入学式が終わって2週間。

友達ができない。

大学へ行く。授業がわからん。むずかしい。つまらん。90分授業も長い!

学食へ行く。ものすごく安い。カツカレー170円。うそ?安い!

注文するとカツがペラペラ。なんだ?このカツは?

まわりを見渡す。結構女子が多いな~

高校の時と違って、かわいい子がいるわ!いるわ!わんさかいるわ!

絶対楽しい4年間にしてやる!

だれでも思うことである。


大学の正門から出ると、ものすごい美人OLがニコニコして話しかけてきた。

さっそく、チャンス到来!これは逆なんぱか?

お~!まい!ごっど!

そして

あろうことかこの美人OLの口車にまんまと乗ってしまい英会話教材カセット購入の
契約書にサインした