リニューアル「オイラとギター」その11

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「キミ、新入生?」

「は、はい」

「ちょっと時間あるかな~」

「はい。時間ならたっぷり」

テレビのドラマから飛び出してきたような美人だ。
いかんぞ。完全にまいあがっている。なにしろOLに話しかけられるのは生まれて
はじめての事だから仕方がない。ものすごく緊張している。

きれいだ。。。かれんだ。。。

長い髪がすてきだぁ~ まるで銀河鉄道999のメーテルのようだぁ~



「そこの喫茶店でコーヒーでもどう?」

今までかつて女性と喫茶店などに入った事もないのだ。

窓際のテーブルを挟んでオイラとそのOLは座った。

「何学部?」

「あの経済学部です。」

「出身はどこ?」


あっ、さっそく オイラの事さぐってるぅ~

「どこの出身に見えます?」

「鹿児島ってとこじゃない」

「なんでわかったんですか?」

「だって典型的な鹿児島の顔だもん。。。」

「えっ?鹿児島の顔をしてます?」

「冗談!冗談!キミの話し方がモロ、鹿児島県のほうのイントネーションだったからさあ
 ほら、九州で鹿児島県だけが話し方が異質じゃない。だからすぐわかったのよ」

異質?

ちょこっとカチン!

「あっ!いじけた?ごめん。ごめん。 全然悪気はないから」
 ところで趣味って何?」

「ギターを少々・・・・」

「へえ~ギター弾けるんだ? いつも何を弾いてるのぉ?」

「長渕とか・・・」
やべっ!石野真子って言いそうになったぞ。

「えっ、剛とかやってるんだ。剛の素顔っていい曲よねえ・・・私も剛は結構聴いてる!
 素顔とか弾ける?」

きたぁ~!

「ええ、だいぶ弾けますですよ!」

いかん、言葉の使い方が変だ。
気づかれたか?

「じゃあさ、今度 聴かせて?」

「ええ、いつでもよかですけん!」

よし、この話し方は福岡弁だぞ。
使い方も間違ってないはずだ。
よし!自分でもしっくりきた。


アルバイトの子が注文を取りにきた。

「私はレモンティで、キミは?」

「じゃあ、オレもレモンティで・・・・あのぅ・・・氷の入ったやつでお願いします」

「アイスレモンティですね」

や、やべ~っ!
イモだ。イモだと思われたかもしれない。絶対イモだと思われたぞ。
このOLにも店の子にも絶対イモだと思われてしまったかも。

言われる前に機転をきかし、ぼそっとつぶやいた

「サツマイモ!・・・なんちゃって」

OLは全く無反応だった。


「ところでさ、大学卒業したらどういう方向に進もうと思ってるの?」

「いや、いまのところ全然考えてませんけど・・・」

「そうだよね~、まだ1年生だし、やっと受験勉強から解放されたんだから
 キャンパスライフを楽しまなきゃねえ」

「ええ・・・・」

キャンパスライフだって。使った事もない言葉だ。

「あのね、中学校から英語の勉強始めて高校も3年間英語の勉強して
 少しは話せるようになった?」

「はぁ・・・・・?」 いきなりこのOLは話題を英語に切り替えてきた。
何を言ってるだ?

「社会に出て一番求められるのは、言語力よ。英語くらいできないと、社会に出ても勝ち残って
 いけないのが現実なの! わかる?」

「はぁ・・・」

そのOLはいきなりたたみかけるように、話しかけてきた。
パンフレットをかばんから、取り出して

英会話教材セット+英会話スクール = 44万円

「どう? 安いでしょう! 英会話スクール付きでたったの44万円よ」

「たったの44万円?」

「支払いを心配してるんでしょ?」OLはニコッとほほえんだ。

ああ~ きれいだ・・・・なんて美しいんだ。 この人は。。。

「私ね、学生さんが支払いに困らないようにアルバイトも斡旋してるの。。。だからみんな
 安心して分割払いができてるのよ!」

ああ~ きれいだ・・・・なんて美しいんだ。 この人は。。。


翌々日に契約書にサインして10日後に下宿にでっかいダンボール箱が送られてきた。