まだ6年。もう6年。どっちもだ。②
7年前の信州上田に向かう新幹線の中。
「おとうさんってさ。。怖い人?」
「うん。。信州のラオウと地元では呼ばれているわ」
「ラ王?」
「うげぇ!?まじで」
「相当の覚悟が必要よ。あなたはユリアを奪っていくんだからね」
「おい!ユリアって誰の事だよ」
新幹線故障して東京に引き返さないかなぁぁ?
「でもね。。おかあさんは応援してくれてるから。。」
「お、おとうさんは。。。?」
「これだけは言っておくね。。実家の玄関で
ラオウの前でひざまづき、まず忠誠を誓いなさい
ユリアを守るために神すら敵に回しますと宣言するのです」
「だからユリアって誰の事だよ?」
基本的にみゆきさんは酒がぐいぐいいける女である。さらに
アルコールが入るとみゆきさんのマシンガントークは止まらない。
私は一方的に聞き手に回る。
出会って間もないある日の事。
今度私の家に遊びにきませんか?お料理作りますから。。
ほお。。。この女、料理が得意なのか?
女性から家に招かれるのは人生初である。
日曜日、言われたとおり朝から何も食べないで大井町線等々力駅に下車。
改札口の向こうでみゆきさんが手を振る。
正直腹ペコだ。
かなり腹ペコだよ。今すぐ喰いたい
「近くに等々力渓谷がありますので行きませんか?」
「おっいいねえ・・・」
よかねえよ!こちとらお腹すかせて来てくださいねとメールが
来たから朝から何も食ってなくて腹ペコなんじゃ。。
渓谷なんかええよ。次で。次で。
後日聞いたが、休日の私のファッションを見てみゆきさんは思ったそうだ。
「この人のファッションセンス。。。変だわ。。様子がおかしい。。
大丈夫?この人・・・・」
私のファッションセンスの悪さは折り紙つきで
大学の時、片思いの女子からも「もう少し、、センスがねえ・・・」と言われたことも
あった。黄色いGパンと緑色のTシャツ。。どこが変なんだよ?
いまだにわからん。
結婚して6年。みゆきさんからも
「よっくん!その組み合わせは様子がおかしいよ」
あのさ。。。その「様子がおかしい!」という表現はやめてくれよ。
みゆきを初めて行きつけのフォーク酒場「昭和」に連れて行った夜。
人様のステージなど見向きもせずカウンターでしゃべる。しゃべる。
「彼のどこがよかったの?」と常連が聞いてくる。
「だってかっこいいし・・・」
「どこがぁぁぁぁああああ?」
常連たちから怒号が飛ぶ!飛ぶ!飛ぶ!飛びまくる。
みゆきさんも常連たちに打ち解けるのにそんなに時間はかからなかった。
楽しい昭和ライフが始まった。