同窓会

ひろしは50才の同窓会に来なかった。

ちくしょう！なんで来ねえんだよ。

まあ来ねえのは

わかってたけど。

40才の同窓会も

30才の同窓会も

20才の同窓会も。。来なかった。

おまえが来ねえから

50才の同窓会のときはとうとう誰も

ひろしの名を口にしなかったなあ。

きっともう忘れられてしまったんだなあ。。

中学の時に自転車で鹿児島１周に一緒に行った。

頂上が見えない長い上り坂。

ペダルこぐふとももと

ふくらはぎがきつかった。

ひろしが横につく。

「芳樹！降りるなよ！絶対降りるな！根性を出せ」

そう言ってひろしは追い抜いてどんどん坂を

登っていく。

「根性」？５０半ばになった今じゃ死語だなあ、、

でもさあ。。おれはひろしみたいに根性も体力もないからペダルこぐのを

止めて、自転車から降りてアスファルトにへたへたと座り込む。

喉が渇いた。水筒を取り出した。

先を行くひろしはとっくに見えなくなった。

すげえな。ひろしは。

いや違う！ひろしの自転車は10段変速。

おれの自転車は５段変速。

その差だよ！

へとへとになって坂の頂上待ってたひろしに言ったら

「根性の差だよ！」

ひろしは笑ったっけ。

そして中学を卒業して高校に入学して月日が流れたある日。

ひろしは家出した。突然の出来事だった。

みんなの前から姿を消した。

みんなで探したんだぞ。ひろしの事。

それから１年後。

山の中で骨になって見つかった。

首をつって死んじゃってた。

生徒手帳が落ちてたからすぐ身元がわかったらしい。

小さいお葬式。

おかあさんは「やっと帰ってきてくれました」と

みんなの前で挨拶をした。

小さな声だった。

 帰省するたびになんとか時間をつくり墓参りに行く。

お墓はいつもきれいだった。

いつも花があった。

２０才になったぞ。

東京にいくことになったぞ。

結婚したぞ。。

子供が生まれて父親になったぞ。。

離婚したぞ。。

再婚したぞ。。

んじゃまたな。。。。

またくる。。

まだ友達だよな

ずっと友達でな。

ひろし。